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北赤道海流域の海洋構造


 ニホンウナギの産卵場は、グアム島に近いマリアナ諸島西方海域の北赤道海流中にあります。ニホンウナギは、日本、中国、台湾、韓国、そしてルソン島の北端にしか分布しておらず、それらの個体間には遺伝的な違いが認められないこと、また、ふ化後数週間しかたっていないレプトセファルス幼生がこの海域でしか採集されないことから、この海域が本種の唯一の産卵場とみて間違いありません。2005年の白鳳丸航海ではふ化後数日しか経過していないプレ・レプトセファルス幼生が採集されました。親ウナギはどのようにして産卵場を見つけるのでしょうか。親ウナギが回遊する空間的な規模を考えると、オスとメスが偶然に遭遇する確率はほとんどゼロであり、そこには何か不思議なメカニズムがはたらいていると考えられます。今までの白鳳丸による研究調査から、そのためのランドマークとして北赤道海流の表層水を南北に分断する塩分フロントに注目が集まってきています。それはレプトセファルス幼生が塩分フロントの南側で採補されることが多く、この周辺の海流構造が幼生の西方輸送に適したものとなっているからです。


図1 日本ウナギの産卵場と分布
および西部亜熱帯循環
写真1 レプトセファルス幼生 写真2 プレ・レプトセファルス幼生