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成長期の資源と生態


 ニホンウナギの資源量は近年激減しており(図1),資源の保全が急務となっています.本種資源が減少した要因として,乱獲や生息域の環境変化, 海洋環境変動などが指摘されています.では,私たちはどのようにしてこの資源を守っていけばよいのでしょうか?  海洋生活期を終えたニホンウナギは,成長期にあたる黄ウナギとして(写真1),約5年から10数年を私たちが生活する沿岸域の成育場で過ごします.これは,ニホンウナギが人間活動の影響を強く受ける沿岸域で長い間生活していることを意味します.つまり,海と河川を行き来する彼らの生活史の中で,人間が直接管理することができるのは沿岸域だけなので,沿岸域における黄ウナギの資源や生態,それらに対する人間活動の影響を明らかにすることは資源管理を行う上でとても重要となってきます.しかしながら,これまでの研究は外洋の初期生活史に注目したものが多く,黄ウナギに関する知見が不足しているのが現状です.  そこで,私たちの研究室では,河川・湖沼におけるニホンウナギ漁獲量の統計解析や野外調査など他種多様なアプローチによって黄ウナギの資源や生態を明らかにすることを目的に研究を進めています.得られた結果から,本種の適切な資源保全策について提言することを目指しています.また,ニホンウナギは,沿岸生態系における食物連鎖で高次捕食者に位置しているため,本種資源を保全することは,ニホンウナギ資源の回復に繋がるだけでなく,沿岸生態系全体を豊かにすることに繋がるものと考えています.  日本全国の様々な機関から収集した河川・湖沼におけるニホンウナギの黄ウナギ(未成魚)と銀ウナギ(成魚)の漁獲量データに基づき,護岸による河川湖沼の改修工事に着目して解析した結果,護岸工事が進行している河川・湖沼ほど漁獲量の減少が著しいことが明らかになり,護岸による環境改変が沿岸域のニホンウナギ資源に悪影響を与えている可能性が示唆されました.治水という意味で大きな役割を果たしている護岸工事が,ニホンウナギにとってはその生息を脅かす存在であったという訳です.  では,護岸による改修工事はどのようにしてニホンウナギに悪影響を与えているのでしょうか?この問いに答えるためには,実際のフィールドにおける黄ウナギの生息状況を明らかにする必要があります.そこで私たちの研究室では,2011年より関東を流れる利根川水系をモデル水系とし,水系内の護岸工事が施されている水域と自然状態の河岸を維持している水域(非護岸)において黄ウナギを採集し,得られた個体の生物学的な特徴を調べることで,環境改変が黄ウナギの生息に与える影響について調べています(写真2).具体的には,護岸と非護岸水域における分布,移動生態,成長,食性および餌環境について,主に野外での分布調査,耳石の輪紋解析および微量元素分析,胃内容物調査,炭素窒素安定同位体比分析,超音波バイオテレメトリー手法(写真3),標識再捕法を用いて調べています.さらに私たちの研究室では,河川内の水深,水温,流速などの物理環境を測定し,それらと黄ウナギの分布との関係についても探っています(写真4).


図1 日本におけるニホンウナギ漁獲量変動(t)
写真1 黄ウナギ 写真2 鰻筒による試料採集
写真3-1 発信機取付け 写真3-2 縫合作業
写真4 物理観測の様子