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乱流がマグロ属などの魚類仔魚の生残と摂餌に及ぼす影響


 遊泳力の乏しい仔魚期においては、乱流や水温といった物理環境がそれらの生き残りに大きな影響を及ぼします。本研究室では、摂餌効率に影響を与えると考えられる乱流環境の違いが、キハダ・クロマグロなどの初期生態にどのような影響を与えているかを飼育実験により検討しています。

 乱流レベルを変えたクロマグロ仔魚の実験((独)水研センター奄美栽培漁業センターとの共同研究)では、乱流強度が中庸な試験区で最も生残率が高くなるDome型の生残率曲線が得られ(図1)、その最大値は乱流を発生させた試験区と比較して約4倍の高生残率を示しました。摂餌数にも生残率の結果と同様の試験区でピークが認められています。実際の海洋と比べると、生残の高かった区は秒速7m以上の風によって駆動される表層の乱流強度に一致。よって、本種はこのような適度な乱流環境を持つ海域を産卵場として選んでいると考えられます。さらに、キハダの乱流実験の結果を比較すると、生残率のピークを持つ乱流エネルギー散逸率は互いに近い値をとることも判かりました。これは、外洋域で産卵する両種の共通の特徴であることを示唆しています。

 現在は、マダイ・ヒラメ・サバビー仔魚についての実験を京都大学フィールド科学教育研究センター舞鶴水産実験所、インドネシアゴンドール水産研究所などと共同で研究を進めています。


図1 乱流強度と摂餌の関係


参考文献

  • 加藤慶樹・木村伸吾・武部孝行・升間主計.(2005) 海洋乱流がクロマグロ仔魚に及ぼす影響.地球規模海洋生態系変動研究(GLOBEC)―海洋生態系の総合診断と将来予測―,月刊海洋422,572-574.
  • 木村伸吾・中田英昭・Daniel Margulies・Jenny M. Suter・Sharon L. Hunt.(2004) 海洋乱流がキハダマグロ仔魚の摂餌に与える影響.日本水産学会誌70,175-178.