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英国メナイ海峡の強乱流混合海域におけるムール貝の高生産過程


 沿岸域の生物生産機構は海洋の物理的な環境変動にどのような影響を受けているのでしょうか。私たちは北大西洋沿岸に生息する二枚貝、ヨーロッパイガイ(Mytilus edulis)を対象に、彼らの生産機構を物理的な海洋環境を検証することで解明しようと試みています。

 ヨーロッパイガイはムール貝の名で知られ(写真1)、食用に漁獲・養殖されている水産資源です。調査地であるイギリス・メナイ海峡では広大な干潟を利用して大規模な養殖がおこなわれています(図1)。植物プランクトンをろ過し捕食するヨーロッパイガイの生産機構はどのような仕組みなのでしょうか。流動観測、クロロフィル観測・各同位体比の測定から、メナイ海峡においてヨーロッパイガイは外洋から潮汐により流入する浮遊珪藻と潮の流れにより海底から巻き上げられる底生珪藻の両方に依存した餌料環境を持つことがわかってきました。今後はさらに、実際に海峡内の植物プランクトンの種組成が場所・時間によって変化するのか、広大な干潟の底生珪藻の生産力はどのくらいなのか、ということに焦点を当てて研究を進めていく予定です。


写真1 ムール貝 図1 メナイ海峡におけるムール貝養殖場