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若狭湾・丹後海における流動構造と関連したスズキ稚仔魚の回遊機構の解明


 文科省の事業として、東大・京大・香川大学・水産総合研究センターが共同して、「沿岸海域複合生態系の変動機構に基づく生物資源生産力の再生・保全と持続的利用に関する研究」を展開しています。本研究は、河川水の流入や海水の流動と生物の移動・分散によって、沿岸海域の岩礁藻場、海草藻場、河口干潟、外海砂浜などの生態系が相互に連関して複合生態系を形成すると考えることに基づき、アサリ・アワビ・ナマコなど無脊椎動物やニシン・スズキ・ヒラメなど魚類の資源生産力を異なる海域間で比較して、複合生態系の構造・機能・変動を理解しようとするものです。

 その一環として、様々な生態系を複合的に有する若狭湾東部の丹後海を代表的な調査海域として設定し、流動構造および水質の観測・測定を平成23年度から実施しています。丹後海そのものは若狭湾に存在する内湾の一つとして位置付けられますが、完全な閉鎖性内湾ではなく、対馬暖流に代表される外洋の流動環境の影響を受けて湾内の循環系が大きく変化する要素を持っている一方、水深が100m程度と浅いことから季節風の影響を受けた海水交換が重要な役割を果たしています。また、湾奥中央に位置する由良川からの河川系淡水の供給があり、湾内全体の成層構造に与える影響や湾奥部でのエスチュアリー循環も考慮する必要があります。一方で、日本海に特有の小さな潮汐により、潮汐混合や移流・拡散の影響が小さなことが特徴的となっており、その影響は附属する舞鶴湾で顕著で独立した海洋構造があるものと推察されます。本研究が主題とする海水・汽水・淡水、沖合・沿岸・岩礁・砂浜といった複合する生態系を連関させた総合的なメカニズムの理解のためには、数値シミュレーションモデルの確立が必要であり、そのための境界条件や同化条件を規定する基礎データの蓄積を行っています。


図1 丹後海の全景写真(由良川からの淡水の影響を受けたフロントがよく見えます)
図2 丹後海に設置している係留系の模式図